いよいよ今週、私が責任監修した超本格レトルトインドカレーシリーズの第一弾「ビーフナハリ」が、全国の「成城石井」各店で販売される(販売元は「36チャンバース・オブ・スパイス」)。

ナハリはインドのイスラームコミュニティ、あるいはパキスタンやバングラデシュで常食されるカレーで、現地ではその深い味わいとともに「究極のパワーフード」としてよく知られ、特に滋養あふれる朝食として人気がある。 日本では、一部の熱心なインド・パキスタン料理ファンには人気があるものの、カレー好きなグルメ全体の認知度はまだまだ。しかしながら「ポーク・ビンダルーの後任として、インドカレー好きの間で人気の出そうな兆しあり」と感じた私と関係各位は密かに商品化にトライしていたのだが、このたびめでたく実現した。
現代のインド料理では、マトンやチキンのナハリもポピュラーだが、本来、ナハリはビーフ。牛肉、牛骨、そして太い骨の中にある髄などを、ナハリ・マサーラーと呼ばれる特製パウダー・スパイス・ミックス(店や家庭ごとに配合が違う「秘伝」のマサ―ラーの典型)、ヨーグルト、トマト、揚げタマネギ、ニンニク、ショウガ、香菜、青唐辛子、ミントなどとともにじっくり煮込んでつくる。 使う部位の種類、切り方、肉と骨の配合比、肉の脂身の削り方、あれこれ気を遣いつつ夜通し煮込み、朝ごはんに、タンドゥール窯で焼いたナーンやカーミーリー・ローティと呼ばれるフンワリとしたパンといっしょに食すのが、現地流。
日本のレストランでナハリを食べられるところはある。しかし本場のナハリは、さらに個性的だ。
まずはルックス。表面全体を、けっこうな厚さの油脂の膜が覆っている。膜はたいてい赤黒い色をしていて、スパイスの、牛肉の、そして揚げタマネギのエキスがたっぷり溶け込んでいるであろうことが、誰の目にも容易に映る。重厚だが、キリリと透明感が高い油膜でもあり、単なる「カレーの上に浮かんだ余計な油」とは異なる存在感を意識する。
肝心の味わいだが、そのおいしさを的確に伝えるのは、なかなかむずかしい。 牛肉や牛骨、髄を秘伝のスパイスやハーブとともに一晩煮るのだから、当然、とてつもなく風味は深く、奥行がある。ダシの濃さもバツグンで、グレービー(カレーソース)はうま味のかたまりになっている。とても辛いカレーなのだが、良質なビーフシチューのようなやさしさも持ち合わせているので、私は現地で食べるたびにホッとする。
ナハリはインド亜大陸屈指の「脂を食べるカレー」でもある。特に最初のひと口、焼き立てのナーンをアツアツのナハリに浸し、表面に浮かんだ赤い脂をグレービーとともにたっぷり吸わせ、口に運ぶのは、至福の瞬間だ。
誤解を承知で申し上げれば、メチャクチャウマい牛もつ煮込み、これが日本の食べ物で案外近い気がする。
ナハリは18世紀頃、ハイデラバード、オールド・デリー、ラクナウなどのムガル宮廷料理として成立、発達したらしい。 日本では、パキスタン料理レストランでしばしば供され、料理名もパキスタンで用いられる「ニハリ(ニハーリー)」で呼ばれることが多い。そんな店のオーナーやシェフなら「ニハリはパキスタン料理」と自信たっぷりに断言するだろうが、パキスタンやバングラデシュでナハリが盛んに食べられるようになったのは、第二次世界大戦後の印パ分離独立時、インドからパキスタンやバングラデシュに脱出したイスラームの人々の力によるところ大という(タンドゥーリ・チキンや、日本のホルモン焼肉誕生のいきさつとよく似たストーリーといえる)。
私のレシピによる今回のレトルト・ナハリは、本場より脂を抑えてある。もちろんこれは日本人の舌を考えてのことだが、同時に、日本米のご飯にかけて楽しむことを前提にした結果でもある。 また、本場のナハリでは少量の小麦粉をグレービーに溶き入れトロミをつけるが、これもあえて採用しなかった。グレービーの味わいと日本米ご飯の相性を考慮しての判断だ。
こうしてできた「ビーフナハリ」、今週、全国の「成城石井」各店レトルトカレー売り場に登場する予定。私のオリジナル配合による特製ガラム・マサラの小袋つき(これだけでも、かなりの価値ありという方もすでにいる)、230グラム入り(トロトロのビーフ90グラムを煮込んで同封)、税別700円。
これ1パックで1合のごはんが食べられた。
ぜひ、手に取っていただきたい。
《このブログを書いているときのBGM》
★個人サイト から「サザンスパイス」レッスンスケジュールや参加申込み可能!は

ナハリはインドのイスラームコミュニティ、あるいはパキスタンやバングラデシュで常食されるカレーで、現地ではその深い味わいとともに「究極のパワーフード」としてよく知られ、特に滋養あふれる朝食として人気がある。 日本では、一部の熱心なインド・パキスタン料理ファンには人気があるものの、カレー好きなグルメ全体の認知度はまだまだ。しかしながら「ポーク・ビンダルーの後任として、インドカレー好きの間で人気の出そうな兆しあり」と感じた私と関係各位は密かに商品化にトライしていたのだが、このたびめでたく実現した。
現代のインド料理では、マトンやチキンのナハリもポピュラーだが、本来、ナハリはビーフ。牛肉、牛骨、そして太い骨の中にある髄などを、ナハリ・マサーラーと呼ばれる特製パウダー・スパイス・ミックス(店や家庭ごとに配合が違う「秘伝」のマサ―ラーの典型)、ヨーグルト、トマト、揚げタマネギ、ニンニク、ショウガ、香菜、青唐辛子、ミントなどとともにじっくり煮込んでつくる。 使う部位の種類、切り方、肉と骨の配合比、肉の脂身の削り方、あれこれ気を遣いつつ夜通し煮込み、朝ごはんに、タンドゥール窯で焼いたナーンやカーミーリー・ローティと呼ばれるフンワリとしたパンといっしょに食すのが、現地流。
日本のレストランでナハリを食べられるところはある。しかし本場のナハリは、さらに個性的だ。
まずはルックス。表面全体を、けっこうな厚さの油脂の膜が覆っている。膜はたいてい赤黒い色をしていて、スパイスの、牛肉の、そして揚げタマネギのエキスがたっぷり溶け込んでいるであろうことが、誰の目にも容易に映る。重厚だが、キリリと透明感が高い油膜でもあり、単なる「カレーの上に浮かんだ余計な油」とは異なる存在感を意識する。
肝心の味わいだが、そのおいしさを的確に伝えるのは、なかなかむずかしい。 牛肉や牛骨、髄を秘伝のスパイスやハーブとともに一晩煮るのだから、当然、とてつもなく風味は深く、奥行がある。ダシの濃さもバツグンで、グレービー(カレーソース)はうま味のかたまりになっている。とても辛いカレーなのだが、良質なビーフシチューのようなやさしさも持ち合わせているので、私は現地で食べるたびにホッとする。
ナハリはインド亜大陸屈指の「脂を食べるカレー」でもある。特に最初のひと口、焼き立てのナーンをアツアツのナハリに浸し、表面に浮かんだ赤い脂をグレービーとともにたっぷり吸わせ、口に運ぶのは、至福の瞬間だ。
誤解を承知で申し上げれば、メチャクチャウマい牛もつ煮込み、これが日本の食べ物で案外近い気がする。
ナハリは18世紀頃、ハイデラバード、オールド・デリー、ラクナウなどのムガル宮廷料理として成立、発達したらしい。 日本では、パキスタン料理レストランでしばしば供され、料理名もパキスタンで用いられる「ニハリ(ニハーリー)」で呼ばれることが多い。そんな店のオーナーやシェフなら「ニハリはパキスタン料理」と自信たっぷりに断言するだろうが、パキスタンやバングラデシュでナハリが盛んに食べられるようになったのは、第二次世界大戦後の印パ分離独立時、インドからパキスタンやバングラデシュに脱出したイスラームの人々の力によるところ大という(タンドゥーリ・チキンや、日本のホルモン焼肉誕生のいきさつとよく似たストーリーといえる)。
私のレシピによる今回のレトルト・ナハリは、本場より脂を抑えてある。もちろんこれは日本人の舌を考えてのことだが、同時に、日本米のご飯にかけて楽しむことを前提にした結果でもある。 また、本場のナハリでは少量の小麦粉をグレービーに溶き入れトロミをつけるが、これもあえて採用しなかった。グレービーの味わいと日本米ご飯の相性を考慮しての判断だ。
こうしてできた「ビーフナハリ」、今週、全国の「成城石井」各店レトルトカレー売り場に登場する予定。私のオリジナル配合による特製ガラム・マサラの小袋つき(これだけでも、かなりの価値ありという方もすでにいる)、230グラム入り(トロトロのビーフ90グラムを煮込んで同封)、税別700円。
これ1パックで1合のごはんが食べられた。
ぜひ、手に取っていただきたい。
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BAD COMPANY『STRAIGHT SHOOTER』(1975年)
セカンドアルバム。緩急自在な音作りの名盤。
https://www.youtube.com/watch?v=TeZqjZ_kvLY
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