カレー&スパイス伝道師ブログ 2

インド&スパイス料理家、渡辺玲のブログ。2019年9月4日、ヤフーブログから移行。

2020年04月

 4月16日~5月6日、クッキングスタジオ「サザンスパイス」は休業。皆様同様、都や国の感染防止対策に最大限協力し、営業自粛することにした。

 20歳すぎから現在まで、4月5月のゴールデンウイークをカレンダー通りに休めた年は一度もなかったように思う。24才まではバンドのライヴ、25~6才のときはレコーディングスタジオで缶詰(自分のレコーディングではなく、レコード会社のディレクターという裏方稼業)、その後は厨房だったり、豚の放牧場だったり(一時は牛・豚・鶏すべての精肉におけるスペシャリストだったし、無添加のハム・ソ-セージ、国産チーズなどにも関わっていた。罪深い?)、地方のデパートだったり、灼熱のインドだったり、まあとにかくゴールデンウイークは休みと無縁。自分でそうしたつもりでなくとも、なぜか必ず仕事が入っていた。

 それが、今年のゴールデンウイークは…、こんなの当然初めて。有意義な毎日にしないと、バチがあたる。

 5月7日からスケジュールを入れ、レッスン再開予定。何とか実現してほしい。
 当面、せいぜいこのブログでも、かつてのように日々の食事などなるべく頻繁にアップするので、乞うご期待。

toyota1600gt

「新型コロナ」といわれると、つい、こういうのを思い出してしまうのはBorn in the 50's(ポリスのファーストだったか)な人々か。正確には、このクルマは「トヨタ1600GT」であり、コロナではないらしい。スタイリッシュな2000GTの陰に隠れていたが、渋くてカッコよかった。

このブログを書いているときのBGM》 
BEDLAM『BEDLAM』(1973年)
 第二期ジェフ・ベック・グループ解散後、こく短い間、コージー・パウエルが組んでいた4人組ハード・ブルース・ロック・バンドの唯一のアルバム。いかにもブリティッシュくさいダークなノリがいい。
https://www.youtube.com/watch?v=6fqC22nF8es


★「サザンスパイス」新公式サイトはコチラ

★個人サイト『誰も知らないインドカレー』から「サザンスパイス」レッスンスケジュールや参加申込み可能!





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https://yummysdish.exblog.jp

 さんざん、どうしようかと悩んだが、今月、クッキングスタジオ「サザンスパイス」でレッスンすることにした。

 ただし、感染防止第一につき、昼間の11時から14時のみ。少人数で実施予定。手洗いの励行、十分な換気、マスクやウェットティッシュ、除菌シートなど完備等、できるだけのことをこれまでもしてきたが、今後も徹底する。

 クッキングスタジオ「サザンスパイス」4月のスケジュールはコチラ

 個人的なおすすめを挙げると、まずはベンガルのチキン・カレー「チキン・カーサ」(19日ほか)。ヨーグルトとフライド・オニオンというイスラーム最強の組み合わせによる風味豊かな仕上がり、そして具として入れるジャガイモの意外なほどの貢献ぶり(天然のアミノ酸含有量が高い)。デリーのムガルスタイルのチキン・カレーとよく似ているが、こちらの方が白いご飯によく合いそうなのは、カルカッタという土地勘ゆえか。

 ジンジャー特集(17日ほか)はいつも人気のクラスだが、今回、メインである「ジンジャー・チキン」というカレーを全面リニューアル、これまでの北インド式から南インドのスタイルに代えた。ちよっと変わったレシピで、南インドなのにヨーグルトで肉をマリネし、サラサラというよりトロリとしたカレーソースに仕上げる。

 チキン・カレーなら22日の「チキン・クルマ」もおすすめ。北インドのマイルドなカレー、コルマが南インド的に変化したもので、ポピー・シードやカシューナッツを使い、風味豊かに仕上げる。
ss chicken kurma 151216

















 南インド、ケララが起源のチキン・クルマ。南インドのバター・チキン的ウマさ

 そのほか、インド・ベジタリアン・カレーの大人気アイテムであるオクラのマサ―ラー、焼きナスのカレーをチャパティとともに食べるレッスン、北インドのホットな粗挽きスパイス・ミックスであるカラヒ・マサーラーを手づくりするレッスンなど、ナイスなレッスンを厳選した。

 レッスン申し込み、お問合せ等、下にもある「サザンスパイス」公式サイト、または個人サイト『誰も知らないインドカレー』からどうぞ。


このブログを書いているときのBGM》 
THE ROOSTERS『DIS』(1983年)
 1979年、音楽で一旗揚げようと東京に出てきた私、1980年デビュー直前の彼らの東京初ライブを観て、初めて同世代のバンドで敗北を認めざるを得ない、そんなスゴさを実感し、以来、彼らの動きは常に注目した。このアルバムは個人的に彼らの最高傑作の1つ。
https://www.youtube.com/watch?v=ntibTjRZrng
 これはシングルバージョンで、アルバムとは異なるテイクだと思う。


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 以前から、グルメな人たちの間で少しずつメジャーになってきたインド料理系メニューの1つに「ビリヤニ」がある。

 ビリヤニという料理のプロフィールを極力かんたんに表現すると、例えば
「ふんだんにスパイスを使用したチキンやマトン、野菜やエビなどのカレーをインディカ種の香り米とともに炊き上げた、インド亜大陸式炊き込みご飯」というようなものになる。
 ただし、カレーになる材料は使うが、必ずしもカレーはつくらない、炊き上げるとあるが、パスタのように米をゆで、カレーと層にし重ね蒸しにして仕上げる(名古屋のひつまぶしをイメージしていただきたい)とか、いろいろと但し書きが必要となる。

 インド亜大陸にはビリヤニとともに「プラオ」「プラウ」などと呼ばれる炊き込みご飯もある。ビリヤニが、ウェディングパーティなど重要なお祝いに欠かせないゴージャスなハレの日メニューなのに対して、プラオはより日常的な「炊き込みご飯」。手間のかかる「重ね蒸し」スタイルのビリヤニ的調理法は採用されず、原則、スパイシーな具材と生米をいっしょに炊き込む実直な調理を行う。

 ビリヤニ、プラオとも、そのルーツは中央アジア各国(アフガニスタン、ウズベキスタン、カザフスタンなど~スタンという国々)や昔のペルシャ(現イラン)で生まれ発達した「パラオ」「ポロ」などと呼ばれるイスラームの炊き込みご飯ともいわれる。

 日本では、南インド料理を得意とするレストランが同時にビリヤニを看板メニューにしていることが多く、その結果
「ビリヤニは、もともと南インド料理である」
 という説が、まことしやかに信奉されていたりする。

 ビリヤニを南インド料理だと勘違いしている人たちの中には、
「南インド料理の方が北インド料理より好き」
 という方が多い気がする。
 好き嫌いは個人の感覚だから、こちらがとやかくいうものではないが、極端な人になると
「南インド料理の方が北インド料理より優れている」
 とか
「南インド料理の方が北インドよりおいしい」
 などといったりしている。こうなると手に負えない。

 南インドにも、北インドのラクノウと並ぶビリヤニの聖地ハイデラバードをはじめとして、チェンナイ、マドゥライ、カライクディ、バンガロール、カリカットなど各地に個性的で美味なビリヤニがある。それでもやはり、ビリヤニはもともと南ではなく北インドで誕生、発展したと観るのが理にかなっているはずだ。

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 南インド、バンガロールにて。この地で有名な「ドンネ・ビリヤニ DONNE BIRIYANI」の加熱中。横に広い鍋の底と密閉したフタの上両方に炭をセット、上下から熱を加えて仕上げる。

 タイやマレーシア、シンガポールなどにもビリヤニに似た料理がある。西に行けば、先にモ通り、中央アジアから中近東やトルコ、果ては北アフリカのモロッコやチュニジアあたりまで、ビリヤニやプラオに似たに似た料理が存在する。これらの料理それぞれのこだわりや、意外な共通性に思いをはせるのもまた一興である。
 
 チャパティやパラーター、ローティ、プーリーなど、小麦粉、特に体にもいい全粒粉でつくる無発酵パンが、ふだんの主食として米飯以上に大きな存在感を持つ北インド。そんな中、ハレの日のごちそうとして、小麦ではなくコメ料理であるビリヤニを現地の人々がこよなく愛すのは、根っからコメ好きな日本人として、何ともうれしく、誇らしい気持ちになるし、インド亜大陸の食文化が持つ懐の深さに改めて敬意を表したくなる。
 
このブログを書いているときのBGM》 
ウォッカ・コリンズ『TOKYO   NEW YORK』(1972年)
 先日、新型コロナのため、惜しくも亡くなったアラン・メリルが日本で結成したグラムでストーンなバンドのデビュー盤。全編カッコイイ。
https://www.youtube.com/watch?v=zSNonktvHPw
 イントロのハモンドがまずカッコイイ。全然違う曲調に展開するのもカッコイイ。

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 以前は、日本国内外を問わず、オリジナリティあふれる美味が印象的なインドレストランやカレーショップに出会ったら、備忘録的な意味も込め、食レポをブログにアップしていた。

 それが最近、そうした食べ歩きの成果は、とりわけ、日本国内の店の場合、影をひそめている。理由はかんたんだ。わざわざその存在を知らしめるに値する店に出会うことが少なくなったからだ。

「新型コロナ」が全世界的に猛威を振るう今、東京でインドレストランをオープンさせるのは、かなり勇気が必要なはず。それを軽々やってのけ、まだまだ余力のありそうなのが、東京八重洲地下街の本店をメインに紀尾井町、神宮前、名古屋など一等地で、南インド料理をベースにしたスパイス系レストランを展開している「エリックサウス」(株)円相フードサービス)だ。
 彼らの新店「エリックサウス高円寺カレー&ビリヤニセンター」が、私の料理スタジオからも近い高円寺にオープンしたというので、さっそくランチタイムに行ってみた。
 
 まずは、高円寺という場所を選んだこと。これだけで、すでに一本取られている。「日本のインド」ともいわれるディープなノリのこの地だが(筋肉少女帯の「日本印度化計画」の歌詞の通りである。ちなみに筋肉少女帯のギタリスト本城聡章氏は、私が当初ギターを弾いていたバンドの何代目か後のギター担当だった。尚、プレイスタイルにはほとんど共通点はなかったと思う)、意外にも、正統派のインドレストランは長らくなかった。

 午後2時すぎに店に着いたが、店内は混んでいた。さすがである。
 何となくという感じで、カウンター席に通された(ホールスタッフの女性の動きとことばがハッキリせず、どこに座っていいのかよくわからなかったが、とりあえずひとり分の席がカウンターにあったので座った。バイトであろう、ぎこちない動きのホールスタッフが多い気がした)。ビリヤニのメニューを観たが、ランチでどのメニューが食べられるのか、私にはわからなかった。近くにいた女性スタッフに聞くと、親切に教えてくれた。マトンやフィッシュのビリヤニもあるが、オーダーしてから30分弱かかるらしい。そこで「
チキン」と「マトン・キーマ」という2種類のビリヤニが一度に楽しめる「ツイン・ビリヤニ」というのがあるとのこと。それにしてみた。
「マトン・キーマ」のビリヤニねえ。もっとも手抜きしやすく、うまく作るのが難しいビリヤニだ。それをランチに持ってくるということは…。

 あれこれ考えているとオーダーした「ツイン・ビリヤニ」が登場。

eric biryani center 200403
























 写真で観ると、キレイで華やか、なかなかおいしそうなビリヤニだが、私が実物を見て、真っ先に考えたのが
「ええっ、これだけなの? 量が余りにも少なくないですか」
 左がチキン、右がマトン・キーマだが、どちらも100グラムぐらいに見える。バスマティ・ライスのビリヤニだが、平べったい盛り方なので、さらにボリューム感に欠ける。日本の女性ならこれでもいいのかなあ。ビリヤニ好きだと物足りなくないかな。
 大きなお世話だろうが、そんなことを考えつつ、ひと口目、チキンのビリヤニをいただいた。バスマティ・ライスならでは軽い口当たりが心地よい。ビリヤニはこうでなくては。
 では、もうひと口。ムムッ。今度はこう思った。
「味と香りが弱いな」
 今度はマトン・キーマのビリヤニを食べてみた。これまた同じ。マトンやスパイスの風味がバスマティ・ライスに浸み込んでウマいはずが、味も香りも弱い、薄い。
 どちらも味が薄い上に、塩も少ない。だから、ますます物足りなく、ついでにいえば、2つのビリヤニの風味の差もあまりないように感じられる(写真だと別物とはっきりわかるだが…)。

 ここでさらなる問題に気づく。ビリヤニの上にたっぷりトッピングされた香菜と赤タマネギのスライス、これらが、かえってビリヤニを食べづらくし、特に赤タマネギのスライスの風味が意外なほど強く、風味の穏やかな(というか、風味がやや足りない感じ)ビリヤニの味わいを消しているのだ。ちなみに、私がビリヤニのつくり手なら、生タマネギのスライスをトッピングする場合、くし切りのレモンを必ず添える。そして、食べる方にはレモンをビリヤニの上からしぼってもらう。その方が断然ウマい。

 また、ビリヤニの味わいが物足りないとき、野菜のヨーグルト和えであるライタがナイスな助け舟になることがある。ライタをビリヤニにかける、あるいはビリヤニを頬張る合間にライタを食べてみる。ふつうは、これでおいしさが倍増する。
 ライタをひと口食べて、私は心で唸った。
「またしても…」
 このライタもまた、塩がまるで足りなかった。ビリヤニ、特にマトン・キーマが塩不足だが、それと同等、いやそれ以上に塩が弱い。塩が弱い分、ライタに入っているタマネギらしき何かの苦みがライタに出ていて食べづらかった。

 ライタ活用の望みが断たれた私は、最後に残された「グレービー」に期待をかけた。
 ビリヤニに添えるカレーソースのことをグレービーという。ビリヤニにかけて食べるので、当然、ビリヤニと相性がいいはずだ。今回のグレービーは、メニューを観るに「ナワビ・チキン」というチキンカレーのはずだが、私の知るナワビ・チキンとは明らかに異なる、バターチキンにマスタード・シードを足したようなもの(ナワビ・チキンは北インド、ラクノウのカレーで、マスタード・シードは使わないはず)。ビリヤニといっしょに食べてみたが、ウーム、予想通り、これは合わない。

 最初は少ないなと思ったビリヤニだが、こんなに手ごわいとは思わなかった。
 それでも、ライタを除き、何とかほぼ完食。ごちそうさま。
 私の隣ではカップルがマトンやフィッシュも含め、ビリヤニを数種類満喫。私と違い「おいしい、おいしい」の連発だった。
 
 おそらく、店においでのお客様の多くは、私の隣にいたカップルと同じような感想を持つだろう。なぜなら、最近の日本のインド料理ファンの多くにとって、エリックサウスは名店であり、その味わいには絶対の信頼感があるから。「おいしくないわけがない」のである。
 
 一方、あえてくりかえすが、現時点の高円寺のビリヤニには、かなり手直しが必要というのが、私の考えだ。

 このブログを読んで、「何をエラそうなことをいっているのだ」と思う方も当然いるはず。そういう方は、クッキングスタジオ「サザンスパイス」の「ビリヤニ講座」に参加してみればいい。自分でいうのも何だが、「インドでおいしいとされるビリヤニと同等のもの」を体験できるはず。

「エリックサウス」各店は、インド料理ファンのすそ野を広げ、より大きなマーケットを創ってきた点において、大いに評価されるべきだと思う。特に若い世代、そして女性のインド料理ファン獲得に大きく寄与しているのは、素晴らしい。
 今後もインド料理やカレー、スパイスをキーワードとしたフードビジネスをけん引するのは明白だが、私が最も危惧するのが、料理の原点である「味わい」である。
 であるから、依頼があれば私の持っているノウハウを出し惜しみせずに伝授する。

 最終的に、本場インドに行って、現地並みのおいしさと評価されないとダメだと、私は思う(ありがたいことに、私自身はそのように評価された)。そのためのステップを今登っているのがエリックサウスの姿でもある。
 これからも、大いに期待したいと思っている。

《このブログを書いているときのBGM》 
FOGHAT『NIGHT SHIFT』(1976年)
 前作『FOOL FOR THE CITY』よりヘビーになった6作目。
https://www.youtube.com/watch?v=Dg7b_Knpe4U


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