最近「スパイスカレー」について、取材等で意見を求められることが多い。
先日も三大紙の1つから「スパイスカレーブームの成り立ちや今後」に関するコメントを求められいろいろ話したが、その際、自分でも今更ながら思い起こすことがあったので、忘れないうちに書いておくことにしよう。
既存の「カレー」に対峙するように出てきた「スパイスカレー」という語だが、似たように、既成の状況というか、すっかりできあがったジャンルわけみたいなものに反旗を翻すようにして出てきた新語の1つに「パンクロック」がある。
パンクロックとは、本来1977年頃の英国において、大不況とそれに伴う社会閉塞への不平不満や将来への不安を背景に巻き起こった、新しいスタイルのロックやファッションの創生と、それらに伴う一連の社会現象のこと。
あくまで反体制的なギラギラした存在であるべきロックが「産業化」してしまい、体制に順応し陳腐な消費材に成り下がったしまったことに失望した一部の若いミュージシャンたちが、自分たちの手でスリルに満ちた本来のロックを取り戻そうと、既成のロックにノーを叩きつけたのだが、当時の日本から見ても痛快だった。
社会に対する不平不満を体現したかのような荒くれた暴力的衝動に満ち、やや稚拙かもしれないがストレートで理解しすいメッセージ性とそれまでにないスピードや疾走感に満ちた音楽は、新鮮でカッコよかったし、過激なファッションやヘアメイクも、同様に魅力的だった。
ただし、カッコよかったのはせいぜい1977から79年ぐらいまで。最大の武器であるトンガリ具合とガムシャラな勢いに世間が慣れてしまい衝撃度がなくなると、過激なメッセージも一挙に陳腐化し、色あせた。
今では、残念ながらパンクは社会に対するメッセージとは無縁。音楽やファッションのジャンルであり、ヒッピーやサイケ同様、ノスタルジックな歴史の一コマになった。
飲食店の営業空き時間を利用し「間借り」という形で続々オープン。確固たる人気を博すとともに、じわじわ大阪一円に増殖していった、かつての「大阪スパイスカレー」の姿は、既存の外食店経営に対する密やかな個人店主たちのあらがいであり、巨大で強固な壁に新奇な風穴を開ける魅力的代案のようにも見えた。いわば外食カレー店におけるパンクロック的な発想の転換と確固たる存在感を嗅ぎ取ったのである。
パンクロックと一口にいっても、セックス・ピストルズ、ダムド、クラッシュ、ジャム
という代表的な4バンドだけですら、全然異なる音楽性を持っていた。また、既成のロックの有り様を否定しつつも、60~70年代ロックの熱心なコレクターであり、ニール・ヤングなどの大ファンでもあったジョニー・ロットンなど、かなりのレコードマニアが各バンドにいたりもした。
これらパンクなノリと、「スパイスカレー」といいながら、スタイルやレシピ、そしてできあがりにさまざまなバリエーションがあること、自由な発想をベースにした個性的な仕上がりがウリだが、インド料理教室のレッスンを積んだり、きちんととった出汁をていねいに合わせるなど、本格的な料理術や先人の知恵をしたたかに活用する点で、どこか似ている気がする。
風味的に合わなくてもおかまいなし、見境なくカスリ・メティをどんなカレーにも入れてしまう悪趣味も、初期ジャムのザ・フーへのオマージュのようなものか。
元祖イギリスのパンクロックは2年程度であっけなく終焉したが、大阪スパイスカレーの快進撃はそれ以上に長く、今も続いている。狙いは東京。かつて英国パンクロックが果たせなかったアメリカ進出に似ているが、今のところ、概ねいい調子のようである。
パンクロックの後、ポリスやエルビス・コステロ、U2に代表されるより普遍的な名バンド、名ミュージシャンがイギリスから世に出た。いわゆるニューウェーブやポストパンクである。
一方、アメリカではラモーンズやテレビジョン、パティ・スミス、リチャード・ヘルらのニューヨーク・パンク勢が英国パンクに呼応するように活躍。それらの伝統はしばしの時を経て、最終的にレッド・ホット・チリ・ペッパーズという名バンドの成功へと結実する。
こうしたより普遍的な存在が、スパイスカレー界からも生まれ出るか。
私の知る現状店舗の技術面での限界や食に関するセンスを考えると、かなりハードルは高いと思われるが、興味深く見守っていきたい。

インド、欧風、スパイスカレーなど、日本におけるすべてのカレーの中で、最も好きなものの1つが「渋谷ムルギー」。先代のオヤジさんの頃から通っているので、約40年か。未だに食べ飽きない永遠の名作。「スパイスカレー」の分野からも、こうした銘品が将来生まれたら最高だ。
先日も三大紙の1つから「スパイスカレーブームの成り立ちや今後」に関するコメントを求められいろいろ話したが、その際、自分でも今更ながら思い起こすことがあったので、忘れないうちに書いておくことにしよう。
既存の「カレー」に対峙するように出てきた「スパイスカレー」という語だが、似たように、既成の状況というか、すっかりできあがったジャンルわけみたいなものに反旗を翻すようにして出てきた新語の1つに「パンクロック」がある。
パンクロックとは、本来1977年頃の英国において、大不況とそれに伴う社会閉塞への不平不満や将来への不安を背景に巻き起こった、新しいスタイルのロックやファッションの創生と、それらに伴う一連の社会現象のこと。
あくまで反体制的なギラギラした存在であるべきロックが「産業化」してしまい、体制に順応し陳腐な消費材に成り下がったしまったことに失望した一部の若いミュージシャンたちが、自分たちの手でスリルに満ちた本来のロックを取り戻そうと、既成のロックにノーを叩きつけたのだが、当時の日本から見ても痛快だった。
社会に対する不平不満を体現したかのような荒くれた暴力的衝動に満ち、やや稚拙かもしれないがストレートで理解しすいメッセージ性とそれまでにないスピードや疾走感に満ちた音楽は、新鮮でカッコよかったし、過激なファッションやヘアメイクも、同様に魅力的だった。
ただし、カッコよかったのはせいぜい1977から79年ぐらいまで。最大の武器であるトンガリ具合とガムシャラな勢いに世間が慣れてしまい衝撃度がなくなると、過激なメッセージも一挙に陳腐化し、色あせた。
今では、残念ながらパンクは社会に対するメッセージとは無縁。音楽やファッションのジャンルであり、ヒッピーやサイケ同様、ノスタルジックな歴史の一コマになった。
飲食店の営業空き時間を利用し「間借り」という形で続々オープン。確固たる人気を博すとともに、じわじわ大阪一円に増殖していった、かつての「大阪スパイスカレー」の姿は、既存の外食店経営に対する密やかな個人店主たちのあらがいであり、巨大で強固な壁に新奇な風穴を開ける魅力的代案のようにも見えた。いわば外食カレー店におけるパンクロック的な発想の転換と確固たる存在感を嗅ぎ取ったのである。
パンクロックと一口にいっても、セックス・ピストルズ、ダムド、クラッシュ、ジャム
という代表的な4バンドだけですら、全然異なる音楽性を持っていた。また、既成のロックの有り様を否定しつつも、60~70年代ロックの熱心なコレクターであり、ニール・ヤングなどの大ファンでもあったジョニー・ロットンなど、かなりのレコードマニアが各バンドにいたりもした。
これらパンクなノリと、「スパイスカレー」といいながら、スタイルやレシピ、そしてできあがりにさまざまなバリエーションがあること、自由な発想をベースにした個性的な仕上がりがウリだが、インド料理教室のレッスンを積んだり、きちんととった出汁をていねいに合わせるなど、本格的な料理術や先人の知恵をしたたかに活用する点で、どこか似ている気がする。
風味的に合わなくてもおかまいなし、見境なくカスリ・メティをどんなカレーにも入れてしまう悪趣味も、初期ジャムのザ・フーへのオマージュのようなものか。
元祖イギリスのパンクロックは2年程度であっけなく終焉したが、大阪スパイスカレーの快進撃はそれ以上に長く、今も続いている。狙いは東京。かつて英国パンクロックが果たせなかったアメリカ進出に似ているが、今のところ、概ねいい調子のようである。
パンクロックの後、ポリスやエルビス・コステロ、U2に代表されるより普遍的な名バンド、名ミュージシャンがイギリスから世に出た。いわゆるニューウェーブやポストパンクである。
一方、アメリカではラモーンズやテレビジョン、パティ・スミス、リチャード・ヘルらのニューヨーク・パンク勢が英国パンクに呼応するように活躍。それらの伝統はしばしの時を経て、最終的にレッド・ホット・チリ・ペッパーズという名バンドの成功へと結実する。
こうしたより普遍的な存在が、スパイスカレー界からも生まれ出るか。
私の知る現状店舗の技術面での限界や食に関するセンスを考えると、かなりハードルは高いと思われるが、興味深く見守っていきたい。

インド、欧風、スパイスカレーなど、日本におけるすべてのカレーの中で、最も好きなものの1つが「渋谷ムルギー」。先代のオヤジさんの頃から通っているので、約40年か。未だに食べ飽きない永遠の名作。「スパイスカレー」の分野からも、こうした銘品が将来生まれたら最高だ。
《このブログを書いているときのBGM》
ゆらゆら帝国『ミーのカー』(1999年)
日本のバンドでは数少ない、全面肯定できるカッコよさ。アルバムはどれも名盤だ。
https://www.youtube.com/watch?v=NbUPmZuamQw
★「サザンスパイス」新公式サイトは
★個人サイト『誰も知らないインドカレー』から「サザンスパイス」レッスンスケジュールや参加申込み可能!
ゆらゆら帝国『ミーのカー』(1999年)
日本のバンドでは数少ない、全面肯定できるカッコよさ。アルバムはどれも名盤だ。
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