カレー&スパイス伝道師ブログ 2

インド&スパイス料理家、渡辺玲のブログ。2019年9月4日、ヤフーブログから移行。

2011年07月

7月某日

 本日はひさびさに辛口です。

 最近、さる有名南インド料理店で食事をしました。有名インド料理店の日本人オーナーやカレー店のオーナー、食品会社のスタッフ等の集まる会合です。

 おまかせで、いろいろなものをいただくコースでしたが、こういうときに店の、とりわけオーナーのセンスやキャラクターがよく表れるものだと実感しました。

 この日の場合、なぜか野菜料理(カレーや炒め物など)がほとんどなし。マトンのドライな炒め物と、こちらのリクエストによるマトンカレー、チキンの炒め物が2種類とさらにチキンカレー系のメニューが複数。エビの「ワルワル」らしき揚げ物もありましたが、人数分なし。野菜の炒めやカレーも口にしませんでした(出てきた料理は皆でなかよくシェアするスタイルでしたので、おそらくまったく提供されていないのでしょう)。

 ワダ、マサラ・ワダ、ドーサ、ラヴァ・ドーサ、イドゥリなどのティファンもいだきましたが、すべてココナッツチャツネとサンバルという同じものが添えられてきました。気の利いた店なら、シェフに命じて、異なるチャツネを入れさせたりしますね、きっと。

 マトンやチキンのドライな炒め物を出すなら、私ならパローターでも添えるところ、ずっと白いご飯でした。確実に、白いご飯よりもパン類が合うメニューです。

 イドゥリの表面がベチャベチャだったのも、気になりました。蒸した時の水蒸気がかかってしまったのでしょうが、私の場合、出す前にチェックするか、そもそもベチャベチャにならないように蒸します。

 ご飯メニューも、レモンライスとタマリンドライスはなぜか日本米で作ってあり、白いご飯はタイのジャスミンライスでした。私なら、すべてジャスミンライスにします。

 シェフやキッチンスタッフの技量という点も考慮すべきですが、マネージメントの仕方やちょっとした気配りでメニューバランスや食材の使用法は改善されたと思いました。

 以前、この店で違うコースをいただいたときも、メニューバランスの偏りを意識しました(そのときも、南インドのライスメニューとティファンばかりがやたらとボリューム過多。日本人はカレーを数多くの種類食べたいお客様が多いはずなのですけどね)。

「南インド料理」という名前がカレーファンの間で認知されてきた昨今、実は日本の南インドレストランのレベルについて、最近かなりばらつきがあるなというのが、私の密かな思い、そして危惧でもあります。

 インド料理に限らない話ですが、安くはないお金を払って食事をするのですから、しっかりとした満足の得られる体験をしたいものです。

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 パローターなどで食べたいチキンのドライな炒め物。2種類あったチキンの炒めのどちらも、肉がたいへん堅く、ジューシーさがないように感じられました。現地で食べるのとは違いますね。

《このブログを書いているときのBGM》
ローランド・カーク『ヴォランティアード・スレイヴリー』(1969)
 盲目の天才プレイヤーによるジャズですが、全音楽ファンに聴いていただきたい名盤。
http://www.youtube.com/watch?v=-uRnvMwD6jM
 ジャンルを超えていましたね。私も料理でこんなことをやれれば本望です。

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7月某日

 最近、個人的に、インドの豆カレーであるダール類を作って食べる機会が増えてきた気がします。食材の出所由来が気になるせいでしょうか。

 特によく使うのが、ムング・ダール。緑豆の挽き割りですね。

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 ある日のムング・ダールカレー。豆にニンニク、シシトウ、トマト、ターメリック、カイエン・ペパーを入れて30分ほど煮てから塩で調味。その後、クミン・シード、タカノツメ、バターで炒めたタマネギを入れ、さらに少し煮ればできあがりです。上にのっているのは香菜。あえて薄めに仕上げました。

 これさえあれば、ご飯でもパンでもオーケー。オールマイティなカレーです。

 よく「ダールスープ」という表記を見かけますが、これはインドやネパールの人たちが欧米人のためにわかりやすく説明するため、スープという語を使ったにすぎません。本当の意味でスープではないので「ダールスープ」という書き方には、違和感があります。

 緑豆の他、レンズ豆などを含めたダールカレーのレシピは『旬のかんたんスパイスカレー(アスペクト刊)』、『カレー大全 カレー伝道師の160話』(講談社刊)、『カレーな薬膳』(晶文社刊)等に出ています。参考にどうぞ。

《このブログを書いているときのBGM》
MS SUBBULAKSHUMI『GURU GUHA VANI』(2002)
 インドの人間国宝、故スブラクシュミさんのライヴCD2枚組。チェンナイでの録音。彼女の歌はいつ聴いても心洗われます。
http://www.youtube.com/watch?v=og0N-BPeZJc&feature=related

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7月23、24日

 2日間、都内有数のタイ料理の聖地、錦糸町にある長澤恵さんのスタジオ「ティッチャイタイフードTit Cai Thai Food」に伺い、タイとインドの「カレー」をテーマにしたコラボレッスンを実施、満員御礼の大成功に終始しました。

【長澤さんのメニュー】
・エビのタマリンドカレー
→2種類のトウガラシやガピ、ホムデンなどからペーストを作り、そこに大量のタマリンド、ココナッツ・シュガー、ナムプラーなどを合わせたソースで、エビや野菜をサッと煮込みます。「カレー」とはいっても、このメニューに限ってはスパイスはトウガラシのみ。香味野菜やハーブ、発酵調味料で味を構成していくのがインドとは異なり、興味深かったです。

・スイカのシェイク
→同じ熱帯アジアでも、タイは氷大好き、逆にインドは大の氷嫌いですが、そうしたキャラクターが見事に反映されました。氷とスイカをミキサーにかけ、シェイクにします。ガムシロップの他、隠し味の塩もポイントでしょうね。スッキリとした美味でした。

【私のメニュー】
・カシューナッツのペーストは使わない「バターチキン」
→巷のバターチキンのように甘くてヘビーにせず、軽く、食べやすい新しいタイプ。オールドデリーの名店「カリムホテル」のスタイルからインスピレーションを得ています。インド料理のレッスンは初めてという方にも好評だったと思います。

・ベジタブルライタ
→野菜のヨーグルトサラダですね。これもインド料理ビギナーの方にも親しみやすい一品です。

・食後の紅茶
→初日は「コリアンダーティ」、2日目は「コリアンダー・カルダモンティ」をお淹れしました。どちらも牛乳は使わないブラックティにスライスを効かせたやや珍しいタイプ。

 和やかで、華やかな教室でした。もちろん、見どころ覚えどころも盛りだくさんだったのではないでしょうか。私もさまざまなことが勉強になりました。

 機会を作って、次はぜひ、長澤さんを「サザンスパイス」にお迎えしたいと思います。

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 できあがりのテーブル全景。「サザンスパイス」とはずいぶん違いますね。

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 右がタイ、左がインドの料理。

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 スイカのシェイク。涼やかですね。インドにもスイカのジュースはありますが、こんなにきれいだったかな、という感じがしました。

《このブログを書いているときのBGM》
CAPTAIN BEYOND『CAPTAIN BEYOND』(1972)
 カッコいいロックのお手本の一つですね。ドラマティックでスリリングな作風にシビレます。
http://www.youtube.com/watch?v=tpnWXKDS4Oc&feature=related
 ライヴ映像にステレオ音源をカブせたもの。まあ、このバンドの持つ独特の雰囲気は伝わるでしょう。

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7月某日

 トラウトサーモンの切り身を叩いて、スパイスやジンジャー・ガーリック・ペースト(ショウガとニンニク同量のすりおろし)、シシトウの小口切り(本来は辛い青唐辛子のみじん切り)、香菜のみじん切りなどを混ぜ込み、ボール状にしてから、油で揚げました。「コフタ」=団子の一種です。

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 つなぎに薄力粉を少々。全卵等は使いませんでした。タマネギも入れず。魚の味わいを前に出そうという狙いです。

 普通はカレーソースを作ってしばらく煮込んで仕上げるのですが、この日は揚げたてに刻んだ香菜をかけてビールのお伴にしました。いうまでもなくバツグンでしたよ。

 インドでも、ビールやハイボールの飲める高級ホテルのバーなどに行くと、肴としてこういうメニューが出たりします。少しばかり、現地の喧騒が懐かしくなりました。

《このブログを書いているときのBGM》
ROBERT JR LOCKWOOD AND THE ACES『BLUES LIVE! COMPLETE EDITION』(2008)
 1974年に郵便貯金会館で行われた伝説のライヴの完全盤。CD3枚に詰まった、世界に誇れる貴重な記録といえましょう。オーガナイザーであった中村とうようさんのライナーも素晴らしいです。
http://www.youtube.com/watch?v=OAxvK7snq8s&feature=related
 1915年生まれのブルースマンの90年の映像。惜しくも06年に亡くなりました。

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7月某日

 イカはあまりインドで使われない食材の一つです。例えばデリーのイスラーム教徒やバラナシ、リシケシュのヒンドゥ教の人々にとっては、食物としてはあり得ないものであり、当然カレーのメニューも皆無です。

 一方、例えば南インドのケララ州、コーチンあたりの海辺に行けばイカが売られていて、スパイシーなカレーやマサラ料理になったりします。

 たまにはそんなものをと思い立ち、生のスルメイカを南インド式のマサラ(カレーよりも濃度が高いソースで、スパイス風味もより効いた料理のこと)に仕立ててみました。

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 ベースのマサラには刻んだタマネギ、トマト、カレー・リーフ、マスタード・シード、ターメリック、カイエン・ペパー、コリアンダーなどが入っています。隠し味にココナッツの果肉を削ったココナッツ・ファインとガラム・マサラを使い、イカのクセを取りながらウマみをアップさせました。トッピングはたっぷりの香菜。イカは生のまま輪切りにして入れ、サッと煮ています。下足も使いましたが、スミや内臓、カラストンビなどは入れません。

 トマトの酸味とスパイスの香り、ほのかなココナッツの甘味とコクがいいバランスで、おいしいイカカレーのできあがりになりました。

 9月以降、クッキングスタジオ「サザンスパイス」で取り上げてもいいでしょうね。

《このブログを書いているときのBGM》
KULA SHAKER『STRANGEFOLK』(2007)
 再結成後のアルバム。以前ほど直接的ではありませんが、やはりインドへのオマージュは随所に感じ取れますね。
http://www.youtube.com/watch?v=e0Mv8pdR38I&feature=related
 2006年のフジロックより。

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