カレー&スパイス伝道師ブログ 2

インド&スパイス料理家、渡辺玲のブログ。2019年9月4日、ヤフーブログから移行。

2008年10月

10月某日

 家の近くにある高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」に行ったら「インド産メカジキ」が3切れ450円のお値打ち価格で売られていた。

 インド産というのと価格につられて(この店の魚介類は品質バツグン。ただしいつもは値段が他の店より確実に2割は高い)、即2パック購入。

 メカジキといえばウチではカレー。普通の日本家庭ではありえない発想だろうな。

 カレールーで作るカレーに最もマッチしない具の一つはシーフードだろう。煮込まれすぎてガチガチに堅くなるか、縮んで貧相になるか、あるいはいやなクセが残ったままか。まあ、そんなところがオチだと思う。逆にシーフード専用のカレールーがあったら、おもしろいだろう。

 ところがそんなシーフード、特に白身魚やエビはインドカレーにするとバツグンにおいしい。
 スパイスやハーブ、香味野菜などがいやなクセを消し、うまみや食感をじょうずに引き出してくれるからだろう。

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 この日は『カレーな薬膳』などにレシピのある、南インド風のフィッシュ・カレーに仕上げてみた。
 ココナッツ・ミルクの甘味、タマリンドの酸味、唐辛子やコショウの辛味のバランスが取れれば、バツグンにおいしく仕上がるはず。
 グリーンの鮮やかな葉は香菜、右上の葉は我が家の生カレー・リーフだ。

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 インディカ米にかけるとこんな感じ。小さくて黒い粒々はマスタード・シード、大きい粒はブラック・ペパーである。
 粒のままのブラック・ペパー、実は南インドのノンベジカレーの場合、これがまったくもっていい具合の隠し味になるケースが多いのだ。必須のテクニックといえよう。

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 メカジキをフィーチュアするとこんな感じ。右下にはクローブが見える。

 ちなみに4人分でタマネギは1/2ヶしか使わなかった。その位で十分だ。

 このカレーはナーンは合わない。ご飯の方がおいしい(私はパローターやチャパティで食べるのも好きだが)。

《このブログを書いているときのBGM》
クレイジー・ケン・バンド『ゼロ』。やっぱりいいな、CKBの世界は。

 インドカレーに代表されるスパイス料理を日本人が作る際、最も陥りやすい間違いの一つ。それはスパイスの入れすぎである。

 もともと食べ手としての日本人も「スパイスの入れすぎ、使いすぎ」という完全な失敗料理を「スパイスたっぷりでおいしい」と讃美する大間違いをやるケースが少なくない。

 インド人が調理しているにもかかわらずインド人に人気がなく、日本人だけに受けているインド料理店が東京にもあるが、スパイス使いがラフだ。
 スパイスの見当違いな使いすぎを日本人は「スパイシーでおいしい」と勘違いしているのである。

 日本人が最も入れすぎるのはターメリックだろう。

 四人分のカレー作りで必要とされるターメリックのパウダーは小さじ1/4から小さじ1/2。
 小さじ1だと、私にすればもはや入れすぎだ。

 ターメリックが入りすぎだと、まず色が汚くなり、まるでおいしそうには見えない。
 さらにカレーが粉っぽくったり、香りがわるくなったりする。

 パウダーではない、粒や種のまま使うホール・スパイスで特に注意すべきはクローブ=丁子だろうか。一人前のカレーに5本や6本もクローブが入っていることが日本のインド料理屋ではあるが、入れすぎで無駄使いとしか思えない。

 クローブやシナモン・スティックのほか、異常にクミン・シードやマスタード・シードが多いカレーもまれにある。これまた食べにくいし、香りも変だ。

 具体的には、私の著作やレシピを参考していただきたい。
 私の師匠にあたる名インド人シェフたち、インドで出会った家庭料理の達人たる主婦やお手伝いさんら、すべての人々がスパイスの使用量は私とほぼ同じで、それほど多くないのだ。

 スパイスの利きというのは、日本人が考えるよりも強い。スパイスをやたらに入れるのは、味噌やしょうゆの入れすぎと同じなのである。

《このブログを書いているときのBGM》
サン・ハウス、チャーリー・パットン、ウィリー・ブラウンほか『レジェンダリー・デルタ・ブルース・セッション』。1930年にレコーディングされたミシシッピ・デルタ・ブルースの超名盤。恐るべき音楽がすでにこの時代にあったのには恐れ入る。民族音楽としても素晴らしい。
 

10月某日

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 何かぜんぜん美しくないが、自作の麻婆豆腐。四川山椒をたっぷり使った痺れる味わい。そこらの中国料理屋よりウマかった。

《このブログを書いているときのBGM》
村八分『ライブ+1』。25年ほど前、知り合いのアナログ盤(当時廃盤で確か2枚組で2万円ぐらいしていた)をカセットコピーして聴いていたが、このたびようやくCDを購入。一時期発売されていたCDは「め○ら」「び○こ」「か○わ」といった歌詞のためにオリジナルから1曲削除されていたが、これは完全収録。「バンド本来のポテンシャルには程遠い出来映え」らしいが、それでも十分にスゴすぎる。日本には数少ない、存在そのものがロックなバンドだ。

10月某日

 最近、雨の日になるとグランド・ファンクの「ハートブレーカー」という曲を家でよくかける。

 なぜなら「傘がない」だからだ。


 やっぱり倍テンポになるところは燃えるな。

10月某日

 西荻窪のパンジャーブ式パキスタン料理店「ラヒ・パンジャービー・キッチン」、スターターにカバーブなどをいただいた後、いよいよメインのカレー。

 このお店、野菜カレーにも主に日替わりでユニークな逸品に出会えるが、やはりイスラーム式肉カレーに秀逸なものが多い。

 本日はチキンの砂肝カレー。
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 砂肝の他、ハツも入っている? 当然くさみなどはまったくなし。
 フライド・オニオン式によく炒められたタマネギとスパイス類を合わせたカレー・ソースは、日本にある他のインドやパキスタン料理店とは異なるオリジナリティを感じさせてくれる。

 砂肝のマサラだと、麹町アジャンタのが猛烈においしいが、この店も負けていない感じ。タイプが異なるので、カレー・フリークな方は食べ比べてみるといいだろう。

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 ナーン。インドのムスリム街食堂の味わいだ。器も現地式。

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 調子に乗って、「ブラウン・ライス」もオーダー。フライド・オニオンを炊き込んだバスマティ・ライスだが、香りがよくおいしい。今夏のダンチュウでも紹介されていた。

 ラホールやデリーのイスラーム・レストランが好きな方、ぜひ一度はおいでいただくのがいいだろう。店主であるラヒームさんの人柄もバツグンだ。

《このブログを書いているときのBGM》
Damon&Naomi『WITHIN THESE WALLS』。80年代に大好きだったイギリスの4ADレーベル的な透明感と静謐さにあふれたアメリカ系デュオの作品(一般的にはヴェルベット・アンダーグラウンド的という感じ?)。ザ・スターズやゆらゆら帝国でも聴けるクリハラ・ミチオさんのギターがここでも冴えている。

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