カレー&スパイス伝道師ブログ 2

インド&スパイス料理家、渡辺玲のブログ。2019年9月4日、ヤフーブログから移行。

2007年12月

12月某日

 以前買っておいて戸棚にしまってあったインドの「KINCHEN OF INDIA」ブランドのレトルトカレーを温めて食べてみた。

パッケージはこんな感じ。
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 もともとインドでシェラトン系の五つ星ホテル・チェーンをやっているところの製品だから、信頼度は高い。
 1パックで98ルピー(約300円)というのは、ローカルな場所ならベジタリアン定食が20ルピーぐらいで食べられることを考えれば、かなりの高級品ということになる。

 肝心の中味だが、ムルグ・メティというカレー。ムルグはチキン(渋谷「ムルギー」も元はムルグからだろう)、メティというのはフェヌグリークというスパイスから発芽させたアルファルファを小さくしたような若葉の生ハーブのこと(乾燥させたものがカスリ・メティ。日本でも買えるハーブだ)。
 つまりはメティ風味のチキンカレーということだ。

 本来生のメティ・リーフを使うのだが、これは日本で手に入らない。だから日本では食べられない(まれに「メティ・ムルグ」あるいは「ムルグ・メティ」というカレーを出すインドレストランが日本にあるが、乾燥したカスリ・メティ、あるいはひどいところでは乾燥のカスリ・メティを少量、後はホウレンソウをたくさん刻んで入れるところもある)。

 日本で食べられないカレーをレトルトで食べられるのはありがたい。それでインドに行くとき買ってくるのだが。

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 これが中味。骨無しのチキンがゴロゴロ。メティ・リーフのほか、刻んだ香菜も入っている。グレービー(カレー・ソース)は、トマト、ヨーグルト、カシューナッツのペーストなどでできているらしい。
 レトルトは加熱がキツいので、どうしてもオイルが多めに出て、またそのオイルに素材の色がよく移る。今回はメティや香菜の色なのか、濃い色の油が出て少々気になる。食べる前にスプーンですくいとるのがいいだろう。

 味わいは予想以上にまとも。ヘタな日本のインドレストランより完全に上だ。レトルトのわりに食感もしっかりしている。香りが少ないのが難点か。

 たまにはこういうのもいいだろう。
 おそらくこのシリーズは日本に入っていないと思うが、南インドのMTRというメーカーのレトルトカレーは都内のアジア食品店で手に入る。これもまたおいしい。

《このブログを書いているときのBGM》
AU PAIRSのベストCD。愛すべき80年代英国ニュー・ウェイヴだ(死語)。

12月某日


 おいしいタングリ・カバーブ(鶏ドラムスティックのタンドゥール焼き)、サーグ・チキン(ホウレンソウ入りチキンカレー)とともにつくっていただいたのがチキン・ビリヤニ。

 ビリヤニは今年のダンチュウ7月号でも特集したが、インドのスパイシーなカレーの炊き込みご飯のこと。

 レシピが複雑で手間がかかる上、南北インド、ヒンドゥーとイスラームでつくり方、味わいも異なる。一筋縄でいかない典型的なインド料理の代表である。
 
 日本のインドレストランの多くで出している「ビリヤニ」は、日本米を使ったチャーハン式のものが多く、なかなか本格的なビリヤニに出会えないのが実情だ(本当のビリヤニはバスマティ・ライスと呼ばれる特殊な長粒米でつくられる)。

 この日、わざわざ手間のかかる本物のビリヤニをつくっていただいた。
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 スパイス風味をつけてあらかじめ硬めに炊いたご飯、ヨーグルトとフライド・オニオンをベースにしたチキンカレーを層のようにして鍋に敷き詰め、それをさらに蒸し焼きしてつくった、正統派のイスラーム式ビリヤニだ。
 ご飯の色がまだらになっているのはカレーと層になっていたため、さらには黄色い食紅を上からふりかけ色と香りをつけたため。

 グリンピースがいっしょに炊き込んであった。こうしたやり方のビリヤニははじめて食べる。
 グリンピースを炊き込んだご飯はビリヤニとは別に「マタル・プラオ」「ピー・プラオ」(豆の入ったピラフという意味)といった名前で、インド亜大陸でよく食べられる。日本の豆ご飯にも似たやさしくて素朴なおいしさだ。

 本日のビリヤニは、いわばマタル・プラオとチキン・ビリヤニのいいところをふたついっぺんに食べるようなぜいたくさである。
 とにかくスパイスやチキンなどのうまみがたっぷり浸み込んだ細長いライスが最高の味わいだ。

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 これはライタと呼ばれるヨーグルトの和え物。ビリヤニにはよく箸休めとしてライタが添えられるが、人によってはビリヤニにこのライタをかけて食べる。

 普通のライタはチョップしたタマネギ、トマト、キュウリといった野菜類とヨーグルトをミックスしてつくる。
 ところが本日のライタは、ヨーグルトにすりおろしたニンニク、たたきつぶしたクミン・シードなどのスパイスを入れて仕上げたもの。これがまた実にビリヤニによく合うのだ。

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 タングリ・カバーブ、美しい形の大量なチャパティとともに。中味は見えないがサーグ・チキンも。
 
 しばし日本にいることを忘れる濃密なムスリム・ディナー、ごちそうさまでした。

《このブログを書いているときのBGM》
『And This Is Maxwell Street』という1964年のシカゴブルース路上ライヴ集。
 私のフェイバリットであるロバート・ナイトホークの名演は鳥肌モノだ。デレク・トラックスなどを聞く方は必聴。

 詳しくは/こちらをご覧ください。

 多くの皆様からのご連絡、お待ち申し上げております。

12月某日

 夜、大久保のマレーシア料理店「マハティール」に立ち寄り、ビールと食事。

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 インド風卵焼き。プリッとしたエビ、タマネギ、ニラなどが入り、上からチリソースがかかる。薄く丸く卵を焼くのはインド式オムレツの常套。屋台料理の味わい。

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 ペナン式ラクサ。私の場合、この店に立ち寄るとこのメニューを頼む確率が極めて高い。
 上にのっているのはキュウリ、トマト、パイナップルのスライス、レタスなど。スープは魚のダシで独特の酸味が心地よい。麺は太めのパスタに似たこれまた独特のもの。都内でも本場に最も近いペナン・ラクサだと思う。

 中国系マレー人のオバチャンがシェフだが、中国系のみならずマレー系、インド系のメニューも充実している。ココナッツ・ミルクの利いた各種カレーもおいしくておすすめだ。

《このブログを書いているときのBGM》
 シカゴ・トランジット・オーソリティの同名デビュー盤(1969年)。後年、甘口バラードのイメージばかりが突出したブラス・ロックの雄、シカゴのデビュー作。このときは正確にはバンド名も違っていた。甘口バラードは1曲もなく、ひたすらハードでファンクな独自の音楽世界を展開。ジミヘンも認めたテリー・カスのギターも素晴らしい。

12月28日

 前夜、取引先と銀座でうまい馬刺しなどいただき、上機嫌で帰宅。
 勢いに任せて、最近リリースされたレッド・ツェッペリンの『永遠の詩』未発表映像付きDVDを観て、ノリノリのまま就寝。

 で、朝、目が覚めてDVDレコーダーをテレビにスウィッチし、さっそく出てきた画面がパキスタンのブット元首相暗殺のニュース。

 ウーム、これはショックだ。

 パキスタン版「鉄の女」ともいうべき強い意志と行動力を持った才女にして美人だったが、ご本人が覚悟していたとはいえ、こういう形で突然終焉がくるのは悲しく、むごい話である。

 今後懸念されるのは、パキスタンの混迷はもちろん、日本人にとってパキスタンやインドがやたら野蛮で民度が低いと思われること。
 これらの国には、ピースフルでインテリジェントな人々もたくさんいるのである。誤解しないでいただきたい。

 それにしても、世界の皆さん、Give peace a chanceでお願いしますよ。

《このブログを書いているときのBGM》
パキスタンを代表するロックバンド、JUNOONのベストCD。「スィーフィー・ロック」と呼ばれる彼らの音楽は熱くてクールだ。

 

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