カレー&スパイス伝道師ブログ 2

インド&スパイス料理家、渡辺玲のブログ。2019年9月4日、ヤフーブログから移行。

カテゴリ: 日本のカレー

 書籍への掲載をもう一つ。

『水野仁輔 カレーの学校 スパイスカレー最新レシビ~豪華! 33人のシェフが特別講義』( 八重洲出版)というムックが発売された。
 
 スパイスカレーあるいはインドカレーの人気店、有名店のシェフが勢ぞろい。「カレーの学校」の特別講師として、それぞれ自慢の一品であるカレーを、「校長」水野仁輔さんとのライブ感あふれるインタビューも交え自ら紹介する、というユニークな体裁を取っている。

 なかなか、これだけのメンバーを一堂に集めるのは容易ではないはず。それを見事に実現しているのは、さすが水野さん。
 インタビューでは、各店各メニューの特徴を的確に捉え、調理上のポイントやおいしく仕上げるコツをうまくシェフの口から引き出している。また、時に、水野さん、シェフふたりのやりとりから、シェフそれぞれのキャラクターはもちろん、カレーへの向き合い方や料理全般に対する考えなどもかいま見え、レシピ本としてだけでなく、読み物としても楽しめる。

 私は南インドを代表するカレー「チキン・ペッパー・フライ」を、私自身が監修したスパイスキットでつくる方法を紹介している。
 自分でいうのも何だが、このスパイスキットは本当に便利で、レシピ通りに調理すれば、間違いなく本場並みの美味に仕上がる。どこで買えるか等の情報は、販売元であるスペーススパイスに問い合わせていただきたい。  

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 ちなみにこのムックを刊行した八重洲出版は、半世紀ほど前、まだ小学生から中学生だった私がクルマ好き、バイク好き、自転車好きで毎月購入していた「ドライバー」「モーターサイクリスト」「サイクルスポーツ」といった各雑誌を刊行している出版社だった。免許もないのに、クルマやバイクの雑誌を読み漁り、知識や情報は当時のカーマニアの平均以上。自転車も自分でパーツを集め、フレームをビルダーに特注、オリジナルの一台を自分の手だけで組み上げた。インターネットなどない時代、クルマやバイク、自転車に関する世界の情報収集は、そのほとんどが前述をはじめとする雑誌のおかげだった。後年から現代に至る、音楽や料理についての知識欲や情報探求の素地も、この時期の雑誌耽読に負うところが少なくない。今回の掲載も、そういう点で必然というか、縁みたいなものを感じる。
 
 書籍や雑誌の不振がいわれて久しいが、私はやっぱり電子書籍ではなく、現物派だ。本は単なる消費財ではないし、本のページを繰る楽しさもいつまでも忘れたくない。

《このブログを書いているときのBGM》
FREE『HEARTBREAKER』(1971年)
実質ラストアルバム。ポール・コソフのギターが泣ける。

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 先日発売された、dancyuダンチュウ誌のムック『dancyu定番シリーズ 絶品! トマトごはん』に「冷たいトマトカレー」を載せていただいた。

  元は南インドでミールスなどにも入れられる、ベジタリアン向けのシンプルで美味なマサーラー(スパイスの利いた濃厚カレー)料理。日本の皆さんにも本場の味を気軽に体験していただきたいという常日頃からの想いから、サザンスパイスのレッスンメニュー同様、なるべくアレンジしないレシピにしている。

tomato cover
 
 全部で78もの、トマトをうまく活用したレシピが掲載。
 トマトがおいしい今、最高に役立ちそうな一冊といえる。


tomato curry

書店等で目にしたら、ぜひ手に取っていただきたい。

《このブログを書いているときのBGM》
THE GRATEFUL DEAD『LIVE/DEAD』(1969年)
 ときどき無性に聴きたくなるデッド。やっぱりいつの時代もライブが好きだ。
https://www.youtube.com/watch?v=-Xic-CHInek

 静かなイントロから、徐々に高揚していくさまが心地よい。

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 今から一週間ほど前の4月4日に発売された「日経トレンディ」に、少しばかり協力させていただいた。

 「老いない食事」の特集で、抗酸化や免疫力アップが期待されるターメリックなどのスパイス類と緑黄色野菜や玄米などを組み合わせた「野菜たっぷりチキンカレー」を考案、レシピや写真をフィーチュアしていただいた。

 内容的には、私が『スパイスの黄金比率で作るはじめての本格カレー』(ナツメ社)、『カレーな薬膳』(晶文社)、スパイス』『カレー&スパイス伝道師がおしえる! 四季の食材でつくるスパイスカレー入門』などで繰り返し述べているスパイスの健康効果とリンクするもの。

 ともあれ、おいしいカレーを自作し食べることで健康が維持できるのは、何ともうれしいことだ。一読をおすすめする。

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《このブログを書いているときのBGM》
BOZ SCAGGS『BOZ SCAGGS』(1969)
 元スティーブ・ミラー・バンドのメンバーだったボズの本格ソロ第一弾。マッスルショールズ録音で、DUANE ALLMANのギターが全編素晴らしい。

https://www.youtube.com/watch?v=4lnOUcWU1P0


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 私が責任監修しているレトルトインドカレー「ビーフナハリ」「ラールマース」の2品(36チャンバーズ・オブ・スパイスより発売)、おかげ様で評判もよく、売れ行きもいいらしい。

 そもそもナハリとは、インド亜大陸のイスラーム料理の最高峰で、骨付きビーフをじっくり煮込んだスープカレー。肉はトロトロに仕上がり、ビーフのうまみも存分に溶け出たグレービーはスパイシーでしかも奥深い。もともとは一晩煮込んで朝に食べるパワーフードだった。

 使用するスパイスの配合がユニークな上、手間ひまかけて煮込むので、熟練の凄腕料理人でないと美味なナハリはつくれないともいわれる。日本の多くのインドパキスタンレストランでは、現地で市販されている「ナハリマサーラー」という既製品のスパイスミックスを使用しているケースが多く、私からすると風味が似通っていて感心しない。

 ナハリはご飯でなく、ナーンも含めローティの名前で総称されるインド製パンで食べるのがふつう。「脂を食べるカレー」でもあり、一流ホテルのレストランでナハリを頼んでも、グレービーの上1センチぐらいの厚さでスパイシーな赤い色をした油膜が張って出てくることがある。ここでひるんではいけないわけで、その油膜にナーンやカーミーリーローティ(イーストを使ってフワフワに仕上げた、丸いナーンのようなパン)を浸し食べれば、最高のインド的食体験になる。

 一方、ちょっと気の利いた店のナハリには、大量のショウガ千切りと小口に薄く切った青唐辛子がやはり大量にトッピングされる。店によっては、刻んだ香菜もパラリとふりかけてあるし、カットしたレモンが添えられ、ウェイターから「これを絞ってから食べるように」と念押しされる。
 これらは、ビーフ脂のクドさ、クセをうまみ、おいしさに転換させるための知恵であり、モツや牛スジ煮込みの上にのった刻みネギや七味唐辛子の一振りと共通したサムシングを感じる。

 ものすごくおいしいのだが、日本人向けではない要素も少なくないカレー、ナハリ。私は最小限のアレンジで日本人好みに仕立て直すことにした。
 
 で、レトルト化にあたっての留意点は以下の通り。
・脂はふつうのレトルトより多め。しかし食べやすい仕上がりを目指す。
・日本のジャポニカ白ご飯に合う味つけ、スパイス配合、濃度や粘度、塩加減の実現.。
・ショウガの千切り、青唐辛子、香菜などもいっしょに煮込んで、できるだけ本場に近くする。
・肉はたっぷり、そしてトロトロにやわらかく煮込む。

 個々の具体的解決案は長くなるので省くが、一番迷ったのが、グレービーのとろみづけにアタ(小麦全粒粉)やマイダ(精白した小麦粉)を使用するか否かということ。ナハリはインド料理には珍しく、小麦粉でとろみをつけて仕上げる。レトルトにすると、このとろみの微妙なニュアンスが再現しにくい上、日本米のご飯とのマッチングについてもイマイチというのが、私の評価。一見、日本のカレーのように小麦粉のとろみがあった方が米飯との絡みがよさそうに感じられるだろうが、実食すると、とろみなしの方が日本米ご飯との相性がいいように思われた。
 インド料理の伝統、あるいは現地の味をより正確に再現する点からすれば、明らかに小麦粉によるとろみありを採用すべきだ。しかし、レトルトのナハリを食べる多くの人は、インド料理の伝統とは無関係においしいものを求めるカレー好きの方々なのだ。
 
 私のレトルトナハリはとろみなし。そう決めて正解だったと今も思う。

 日本では「ナハリ」をニハリと呼ぶ人が多い。これはパキスタンなどでのいい方で、デリーなどインドでナハリのウマい街では「ナハリ」というのがふつうのようだ。日本に住むデリー育ちのグルメな知り合いにいわせると「ニハリなんて絶対にいわない。あれはナハリだ」とのこと。私の師であるフセインシェフも「ナハリ」と呼んでいる。

 そんなこともあり、今回のレトルト「ナハリ」、英語表記はNIHARIとして、日本語ではナハリにしてある。

 もともとビーフでつくるナハリだが、今ではマトンのナハリも同様に人気があるし、インドやパキスタンではチキンナハリも食べる。
 マニアックなカレーだが、今回のレトルトは日本人の舌にもマッチしている。さらにいえば、黙って出したら、まずレトルトだとは思われない。それだけのクォリティの高さも自慢だ。

 各種通販のほか、全国の成城石井各店、そのほか有名スーパー等で手に入る。

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 レトルトを開封した中身。やはり脂は多め。


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 日本米の白ご飯にかけたところ。左下に青唐辛子が見える。肉がたっぶりなのがよくわかるはず。

《このブログを書いているときのBGM》
FOGHAT『FOOL FOR THE CITY』(1975)
初めて買った彼らのアルバム。当時のニューミュージックマガジン誌で、中村とうようさんが、「このアルバムのロバートジョンソンのカバー、イントロの雰囲気が素晴らしい」とほめていたからだ。とうようさんにしては珍しくほめていると思い聴いたら、カッコいいので驚いた。

https://www.youtube.com/watch?v=M-9qdXhaCws

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前の記事から、随分と間があいてしまった。書きたいこと、あるいは書くべきことはいくらでもある。
しかし思うに任せない。すべては、病歴15年を超えるパーキンソン病のせいだ。政府が指定する「難病」の1つで、まあ、こんな病気である。

 YouTubeには、私のチャンネルがある。
 スパイスチャンネルだ。

 映像というのは残酷で、体の有り様を現実そのままに映し出す。ここでも、パーキンソン病に起因する手足のふるえや余計な動きははっきりわかるが、編集の仕方がうまいのか、さほど気にならない。

 先日、映画の取材を受けた。来春公開予定のドキュメンタリー映画「カレーは、もはや日本食。」に関連したインタビューの抜粋で「カレー賢者スパイスカレーを語る」という連続企画になっている。

 私の登場場面は、冒頭からパーキンソン病からくる不随意運動(ジスキネジア)全開で、何とも厳しい絵柄だが、いいたいことはいっている。「カレーブロガー」や「スパイスカレー」の信奉者たちが何かいってくるだろうが、実名を出さない輩だろうから、相手にしない。

 ビデオに映る自分を見るのは、はっきりいって苦痛だ。大昔のバンド時代、ステージ上を軽々飛び回っていたはずなのに。とも思う。しかし、現実は現実として受け入れないと、何も始まらない。幸い、料理はきっちり作れるし、舌の感覚もこれまで通り。動かない体を抱えて、今日も頑張ろう。
 月並みだが、私の姿を見て、同じくパーキンソン病の方々、さらにはそれ以外のさまざまな病気で苦しみ悩んでいる方やそのご家族の気持ちが少しでも楽になれば、そして、パーキンソン病を知らない皆損には。こういうやっかいな病気のあること、知っていただければ幸せだ。

《このブログを書いているときのBGM》
OZZY OSBOURNE 『BLIZZARD OF OZZ(1970)』
オジーもパーキンソン病。
https://www.youtube.com/watch?v=U8SCm7kNhOk
それにしてもランディローズ、ナイスなプレイだ。

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