カレー&スパイス伝道師ブログ 2

インド&スパイス料理家、渡辺玲のブログ。2019年9月4日、ヤフーブログから移行。

2007年11月

11月24~28日

 さる衛星放送番組のゲスト出演と取材でデリーに行ってきた。

 雑誌dancyu7月号の取材以来なので約7ヶ月ぶり。
 前回は摂氏45度の酷暑の取材だったが、今回は観光シーズンでもあり、最高気温28度程度なので、まったくもってすごしやすい。朝晩は10度程度なので肌寒くもある。

 今回は極私的デリーのうまいもの紹介といった内容。
 そこは私のこと、本邦初公開のスゴいネタもご用意した。
 カレーファン、インド料理ファンはまず必見といえるはずだ。

 24日の夜、取材前の小手調べとして、今回の宿であるタージ・マハル・ホテルのレストラン「MACHN」(インドのジャングルにある番屋、あるいは見張り塔といった意味。個人的にはジミヘンのカバーも秀逸なボブ・ディランの「見張り塔からずっと」を思い出す)の夕食をチェック。

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 香菜ののったシーク・カバブ、チキン・ティッカ、ミントのチャトニをあしらったパニール(インドのカッテージ・チーズ)のティッカの盛り合わせ。特にパニールがウマい。

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 カリフラワーの香味炒め。今回の旅では、旬のカリフラワーを食べまくったが、そのあたりのお話は別の機会に。スパイスが浸み込むように炒め蒸し煮したカリフラワーは、それ自体のうまみがバツグンで唸らされる。

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 ヨーグルトとカシューナッツの入った骨無しチキンのカレー「ハンディ・ムルグ」。これまた深い味わい。

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 同席したディレクター氏が「アズキのカレーみたいですね」とつぶやいた「ダール・マッカニー」。
 トマト、バター、生クリームでウラド・ダールを煮込んだ「ベジタリアンのバターチキン」だ。

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 ローティやパラタといったパン類の盛り合わせ。精白した小麦粉のナーンよりも、こうした全粒粉のパンが私の好みである。ダールとの相性もバッチリ。

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 ハイデラバード・マトン・ビリヤニ。軟らかいマトンの炊き込みご飯。上に載っているのはフライド・オニオンや香菜など。上品な味わい。

 圧倒的な個性はないが、全体によくまとまった料理を出す店といえる。
 インド到着直後の食事とすれば上出来というべきだろう。
 翌日からの期待に胸がふくらむデリーの一夜だ。

《このブログを書いているときのBGM》
 バンコクをベースに活躍する、日本人を含む多国籍バンド、FUTONの『ペインキラー』。
 相変わらずの80年代テクノ系ニューウェイブ・サウンドがやけに心地よい。 

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11月某日

 品川エキナカのシターラ・ダイナーでカバーブ・セットとともにマトンカレーをオーダー(店のメニューには「ラムカレー」とある)。

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 骨無しマトンをトマトベースの軽めのグレービーで煮込んだもの。巧みなスパイス使いでマトンのクセはうまみへと昇華している。ローティやナーンといったパン類によく合う北インドのスタイルだ。上のグリーンは刻んだ香菜。ホール・スパイス(原形のままのスパイス)はクローブが一粒見えたのみ。

 日本のインド料理店でマトンカレーを食べるとよくクローブに出会う。インドでもまあ、当てはまる話だ。つまり、マトンカレーにクローブはよく合うということである。

 個人的には、マトン料理にはミントの葉が欠かせない。
 ニオイ消しというよりは、よりマトンの風味を引き出してくれる貴重なハーブである。

《このブログを書いているときのBGM》
 アヌーシュカ・シャンカールとカーシュ・カーレ『水の旅』。ときにクラブっぽく、ときにアンビエントなサウンドに絡むシタールが心地よい。

11月某日

 土曜日から、衛星放送のテレビ番組のゲスト出演でデリーに行ってくる。

 デリーの食世界をわかりやすく紹介する内容だが、おそらくかなり興味深いものになるはずだ。日本でまったく知られていない店と料理をハイライトに持ってくる予定。お楽しみに。

 デリー滞在に関する打合せで、夕刻、師匠のいる品川「シターラ・ダイナー」へ。

 夕食として食べたのがカバブ・セット(1600円)。
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 本当はナーンが付くのだが、私はタンドゥーリ・ローティにチェンジ。
 左に「タンドゥーリ・チキン」、緑の丸いのがホウレンソウやポテトをすりつぶして揚げた「パラク・ティキ」、その右がミントや香菜をすりつぶした「グリーン・チャトニ」、黄色のキューブは脂ののった白身魚(スズキ?)のフィッシュ・ティッカ、その右奥にシーク・カバーブ、一番奥がローティ。

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 タンドゥーリ・チキンとパラク・ティキ。どちらも秀逸な出来映え。特にタンドゥーリ・チキンの味つけとカッティングはさすが名人。ヨーグルトを入れない、本場で人気のあるスタイルのグリーン・チャトニも美味。

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 タンドゥーリ・ローティ、シーク・カバーブ。ローティは師匠の出身であるタージ・ホテルのような味。シーク・カバーブはオニオンを入れないスタイル、刻んだ香菜と手作りガラム・マサラが利いておいしい。シークの串の穴の位置がど真ん中なのも、プロの技としてパーフェクト(20年前の修業時、なかなかうまくコピーできず、苦労したことを思い出す)。

 エキナカ手軽にこれだけのものが食べられるのはうれしい。隣では、サンバルとインディカ米のライスのセットを食べる人も。

《このブログを書いているときのBGM》
 クレイジー・ケン・バンド『ソウル電波』。この夏以降、最もよく聴いた1枚。全曲グレート。

 今、インドはかつての日本のような「バブル」な状況にあるのをご存知だろうか?

 例えばホテル。
 インドの宿泊施設には大きく分けて、西洋式で高級高価な「ホテル」と、インド式で時に「ゲストハウス」などと呼ばれる安宿の2種類がある。

 ゲストハウス系安宿も高くなってはいるが、それ以上に強烈なのは高級な都市型ホテルの値段と予約状況である。

 バカ高いのにいつも満室で予約が取れないのだ。

 インターコンチ、マリオット、ホリデイ・インなど、西洋資本のホテルチェーンがインドに参入する中一方、タージ、マウルヤ・シャラトン、オベロイなどいんど系ファイブスターホテルチェーンもさらに豪華に、さらに快適にとしのぎを削っている。

 デリーやムンバイなどのタージやシェラトンのシングル一泊料金は400ドル程度。つまりは4万円以上。しかも1ヶ月前から満室で予約が取りにくいなんて状況なのだ。にわかに信じがたい話である。

 ホテル代が異常に高騰しているのはデリー、ムンバイをはじめとした大都市。というより、デリーとムンバイがとりわけ異常なのである。

 デリーやムンバイにも一泊数千円の、日本でいうワシントンや東急イン的ビジネスホテルはある。

 しかし、値段は日本並みでも、設備やサービスは日本に遠く及ばない。

 実は、今週末仕事でデリーに行くが、ホテルがうまく取れていない。数日間の滞在で最後の一夜の部屋が確保できないという状況。

 一部タイアップの仕事なのに、そのホテルに満足に泊まれないとは不思議な話。
 しかし、視点を変えれば、一泊4万円以上でも、それだけ人気があるということだ。
 皆さんのインドに対するイメージと違うでしょ。

 インドバブルはいつまで続くのか、目下のところ不明である。

《このブログを書いているときのBGM》
 ガンズ・アンド・ローゼズ『ユーズ・ユア・イリュージョンⅡ』

 この日のメインはコレ。

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 チキンを揚げタマネギ、ヨーグルト、生クリーム、スパイスで煮込んだ「ムルグ・シャージャハニー」。直訳すれば「シャー・ジャハーン風の鶏肉」だ。仕上げには、刻んだゆで卵をも混ぜ込む。

 シャー・ジャハーンは、その昔インド国内の多くを治めていたムガル帝国の17世紀の王様。インド・イスラム文化の至宝というべきタージ・マハルを作った王様だ。

 チキンのシャー・ジャハニー風は典型的なムガル宮廷料理のひとつ。私は修業時代、師匠のまかないとしてこれをいただき、えらく感激した。

 ゴージャスでマイルド、上質なホワイトソースで作ったクリーム・シチューのような味わい。しかし、ほのかにスパイスが香るところは紛れもなくインドカレーである。

 他にはおいしい野菜や豆の料理をご紹介する予定。一足早いクリスマスとしてお楽しみいただければ、うれしいものだ。

《このブログを書いているときのBGM》
 リヴィング・カラー『タイムズ・アップ』(1990年)。
 かつて、「黒いツェッペリン」とも呼ばれた優れたブラック・ロック・バンド。ギタリストでリーダー格のヴァーノン・リードはインド音楽とのコラボも経験。実はけっこうインドくさいミュージシャンでもある。 

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